不動産コラム 2023.10.6
不動産売却がお得になる3つの特別控除を紹介!
目次
不動産売却に関する特別控除や特例には、「3,000万円特別控除」や「10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例」などがあります。これらの制度をうまく活用すれば、不動産売却にかかる税負担を大きく抑えられます。当記事では、不動産売却がお得になる特別控除の種類や内容について解説します。
この記事のポイント
- 譲渡所得税が抑える特別控除・特例は、「3,000万円特別控除」「10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例」「特定の居住用財産の買換え特例」
- 「特別控除を受けることを目的として入手した不動産」「マイホームを新築する際に、一時的な住まいとして利用した家屋」「趣味や娯楽、保養のために所有する家屋」などの場合、控除対象とならない
- 不動産売却に関わる特別控除や特例を受けるためには、不動産を売却した翌年の2月16日から3月15日までに確定申告をする必要がある。
- 特別控除を受けて不動産売却ができるかどうかは、不動産会社に確認するのがおすすめ。
譲渡所得税が抑えられる?3つの特別控除・特例
不動産を売却したときに出た利益に対して課税される税金を「譲渡所得税」と言います。譲渡所得税は、不動産売却の税金のなかでも高額ですが、要件を満たすと特別控除や特例が適用されて税負担を抑えられます。以下では、不動産の売却時に活用できる3つの特別控除・特例について紹介します。
3,000万円特別控除
「3,000万円特別控除」とは、居住用の財産つまり、実際に住んでいるマイホームを売却した場合に、譲渡所得から最大3,000万円までを控除できる制度です。
譲渡所得は、不動産を売却することで得られる所得のことで、以下の計算式で算出されます。
譲渡所得 = 成約価格 – (取得費 + 譲渡費用)
3,000万円特別控除の適用となるためには、以下の要件を満たしている必要があります。
- 自分が住んでいる家屋を売るか、家屋とともにその敷地や借地権を売ること。なお、以前に住んでいた家屋や敷地等の場合には、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。
- 売った年の前年および前々年にこの特例またはマイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けていないこと。
- 売った年、その前年および前々年にマイホームの買換えやマイホームの交換の特例の適用を受けていないこと。
- 売った家屋や敷地等について、収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと。
- 災害によって滅失した家屋の場合は、その敷地に住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。
- 売手と買手が、親子や夫婦など特別な関係でないこと。
3,000万円特別控除の注意点としては、住宅ローン控除と併用できないことが挙げられます。そのため、住み替えの方は、どちらの適用を受けるのが有利かを検討しましょう。
参照:「No.3302 マイホームを売ったときの特例|国税庁」
10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例
「10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例」とは、マイホームを売却した年の1月1日時点で、その不動産の所有期間が10年超である場合に適用を受けられる特例です。
10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例の適用を受けると、長期譲渡所得の税額よりも低い税率で計算する軽減税率を適用できます。具体的な適用要件は、以下の通りです。
- 日本国内にある自分が住んでいる家屋を売るか、家屋とともにその敷地を売ること。
- 売った年の1月1日において売った家屋や敷地の所有期間がともに10年を超えていること。
- 売った年の前年および前々年にこの特例の適用を受けていないこと。
- 売った家屋や敷地についてマイホームの買換えや交換の特例など他の特例の適用を受けていないこと。ただし、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例と軽減税率の特例は、重ねて受けることができます。
- 親子や夫婦など「特別の関係がある人」に対して売ったものでないこと。
なお本特例は、上記で紹介した3000万円特別控除との併用も可能です。ただし、一度特例を使用すると3年経過しなければリセットされないため、前年もしくは前々年に同じ特例を使っていないかをチェックしておきましょう。
参照:「No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例|国税庁」
特定の居住用財産の買換え特例
「特定の居住用財産の買換え特例」とは、マイホームを買い換える際に売却したマイホームの譲渡益が出た場合、譲渡益に対する課税を先送りできる特例です。
例えば、2000万円で購入したマイホームを4000万円で売却し、5,000万円のマイホームに買い換えた場合には、通常2,000万円の譲渡益が課税対象となります。
しかし、特定の居住用財産の買換え特例を利用した場合には、売却年に譲渡益への課税は行われません。買い換えたマイホームを将来、譲渡したときまで譲渡益に対する課税を繰り延べられるのです。
なお、本特例を受けるためには、下記の要件を全て満たす必要があります。
- 自分が住んでいる家屋を売るか、家屋とともにその敷地や借地権を売ること。なお、以前に住んでいた家屋や敷地等の場合には、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。
- 売った年、その前年および前々年にマイホームを譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例またはマイホームを売ったときの軽減税率の特例もしくはマイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けていないこと。また、収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けないこと。
- 売ったマイホームと買い換えたマイホームは、日本国内にあるものであること。
- 売却代金が1億円以下であること。
- 売った人の居住期間が10年以上で、かつ、売った年の1月1日において売った家屋やその敷地の所有期間が共に10年を超えるものであること。
- 買い替える建物の床面積が50平方メートル以上のものであり、買い換える土地の面積が500平方メートル以下のものであること。
- マイホームを売った年の前年から翌年までの3年の間にマイホームを買い換えること。
- 買い換えるマイホームが、令和6年1月1日以後に入居した(または入居見込みの)建築後使用されたことのない住宅であること。
- 買い換えるマイホームが、耐火建築物の中古住宅である場合には、取得の日以前25年以内に建築されたものであること、または一定の耐震基準を満たすものであること。
- 買い換えるマイホームが、耐火建築物以外の中古住宅である場合には、取得の日以前25年以内に建築されたものであること、または、取得期限までに一定の耐震基準を満たすものであること。
- 親子や夫婦など特別の関係がある人に対して売ったものでないこと。
また、特定の居住用財産の買換え特例は、住宅ローン控除との併用も可能なため、工夫次第で大きく税負担を軽減できます。
参照:「No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例|国税庁」
こんな場合も控除対象に入る?
不動産を売却するケースには、相続した家屋が不要である場合や共有名義の不動産の売却など、さまざまなケースが想定できます。ここでは、不動産を売却するケース別に、特別控除が適用される要件を見ていきます。
相続の場合
相続した不動産を売却する場合、もともと不動産を所有していた人が一定期間住んでいた家屋であれば控除の対象となります。反対に、住んでいた期間が一時的であったり、建て替えを行ったりすると、控除は適用されません。
取り壊した後に売却した場合
建物を取り壊した後に売却した場合も、控除の対象となります。ただし、売買契約が成立する前に、対象の不動産を賃貸などで他人に貸してしまうと、適用の対象から外れてしまいます。
一時的に空き家となった後に売却した場合
一時的に空き家となっていたとしても、その理由が転勤や入院などであり、将来的に戻ってくることが確実であるような場合は特例が受けられます。 しかし、実際に居住しなくなってから3年目の年末を過ぎてしまうと、特例は受けられなくなります。
土地や建物を誰かと共有している場合
土地や建物を誰かと共有している場合は、各々の持ち分に対して、特例を申請できます。当然のことながら、確定申告も共有者一人ひとりの提出が必須となるため、各自必要な準備を行いましょう。
賃貸併用の場合
住宅の一部を賃貸として他人に貸し出している場合も、控除の対象となります。ただし、控除を受けられるのは、自分が居住のために使っていた居住用家屋の部分のみです。
店舗併用の場合
自宅と店舗が併用されている場合は、居住の用途に使っていた部分のみ、特別控除を受けられます。この際、建物の90%以上を居住に利用していた場合は、建物全体が住居だとみなされます。
控除対象に入らない場合
反対に、要件をクリアしていても特別控除の対象に入らないケースも存在します。控除対象とならないケースには、以下のようなものが挙げられます。
- 特別控除を受けることを目的として入手した不動産
- マイホームを新築する際に、一時的な住まいとして利用した家屋
- 趣味や娯楽、保養のために所有する家屋
- そのほか、一時的な目的で入居していた家屋
その他の特別控除・特例
ここまで、譲渡所得税を抑えられる3つの特別控除・特例について見てきました。上記で紹介した以外にも、不動産を売却したときに利用できる特別控除や特例にはさまざまなものがあります。以下で、順番に見ていきましょう。
被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」とは、相続もしくは遺贈によって取得した被相続人居住用家屋もしくは被相続人居住用家屋の敷地などを、平成28年4月1日から令和5年12月31日までに売却した場合、譲渡所得から最大3,000万円までを控除できる特例です。本特例の適用となる家屋の条件は、以下の通りです。
- 昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること。
- 建物の区分所有等に関する法律第1条の規定に該当する建物でないこと。
- 相続開始の直前において、相続人以外に居住していた者がいない家屋であること。
なお、被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例は、要件がかなり煩雑であるため、国税局が提供している特例適用のチェックシートを活用することをおすすめします。
参照:「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例|国税庁」
平成21年及び平成22年に取得した国内にある土地を譲渡した場合の1,000万円の特別控除の特例
「平成21年及び平成22年に取得した国内にある土地を譲渡した場合の1,000万円の特別控除の特例」とは、平成21年から22年の間に国内にある土地を購入し、5年以上保有して譲渡した場合に、譲渡益から1,000万円を控除できる特例です。
土地の購入時期が限定されているため、一般的に知られる特例ではありませんが、併用可能な特例もあるため、条件によっては大変お得に土地を売却できます。本特例の適用要件は、以下の通りです。
- 平成21年1月1日から平成22年12月31日までの間に土地等を取得していること。
- 平成21年に取得した土地等は平成27年以降に譲渡すること、また、平成22年に取得した土地等は平成28年以降に譲渡すること。
- 親子や夫婦など特別な間柄にある者から取得した土地等ではないこと。
- 相続、遺贈、贈与、交換、代物弁済および所有権移転外リース取引により取得した土地等ではないこと。
- 譲渡した土地等について、収用等の場合の特別控除や事業用資産を買い換えた場合の課税の繰延べなど他の譲渡所得の特例の適用を受けないこと。
なお、平成21年及び平成22年に取得した国内にある土地を譲渡した場合の1,000万円の特別控除の特例は、法人の場合も適用されます。ただし、清算法人ではないなどの条件がいくつか設けられているため、利用前には特例が使えるかどうかを確認してみることをおすすめします。
※参照:「No.3225 平成21年及び平成22年に取得した土地等を譲渡したときの1,000万円の特別控除|国税庁」
公共事業などのために土地建物を売った場合の5,000万円の特別控除の特例
「公共事業などのために土地建物を売った場合の5,000万円の特別控除の特例」とは、所有している土地や建物が公共事業などのために収用された場合に、譲渡所得から5,000万円を控除できる特例です。
公共事業への協力に対する特典とも言えますが、控除額が非常に大きいため、有利に不動産を売却できるでしょう。公共事業などのために土地建物を売った場合の5,000万円の特別控除の特例の適用要件は、以下の通りです。
- 売った土地建物は固定資産であること。
- 原則として、売った資産と同じ種類の資産を買い換えること。
- 原則として、次の期間内に代わりの資産を取得すること。
なお、ひとつの公共事業に対して2年以上に渡って土地建物を譲渡する場合は、最初の年のみ5,000万円控除の対象となります。複数年にわたって適用されないので、注意してください。
※参照:「No.3552 収用等により土地建物を売ったときの特例|国税庁」
特定土地区画整理事業などのために土地を売った場合の2,000万円の特別控除の特例
「特定土地区画整理事業などのために土地を売った場合の2,000万円の特別控除の特例」とは、個人が所有する土地を、国土交通省が行っている中心市街地活性化のまちづくり事業などのために売却した場合、譲渡所得金額から最大2,000万円までを控除できる特例です。
ただし、その譲渡が2年以上に渡って行われた場合でも、最初の年にしか適用できません。
※参照:「第65条の3 《特定土地区画整理事業等のために土地等を譲渡した場合の所得の特別控除》関係|国税庁」
特定住宅地造成事業などのために土地を売った場合の1,500万円の特別控除の特例
「特定住宅地造成事業などのために土地を売った場合の1,500万円の特別控除の特例」とは、所有している土地を地方公共団体が管轄する特定住宅地造成事業などのために売却した場合、最大で1,500万円の特別控除が受けられる特例です。主に、土地収用法に基づいた不動産売買で、地方公共団体などが買い主になります。なお、本特例の適用期限は令和5年12月31日までです。
※参照:「第65条の4 《特定住宅地造成事業等のために土地等を譲渡した場合の所得の特別控除》関係|国税庁」
農地保有の合理化などのために土地を売った場合の800万円の特別控除の特例
「農地保有の合理化などのために土地を売った場合の800万円の特別控除の特例」とは、個人や農業法人が所有している農地を、農業委員会の斡旋によって売却した場合に譲渡益から800万円を控除できる特例です。特例の適用となる対象は、農用地区内の農地となります。ただし、抵当権などの権利設定がある場合は、本特例が適用できません。
※参照:「第65条の5 《農地保有の合理化のために農地等を譲渡した場合の所得の特別控除》関係|国税庁」
よくある質問
最後に不動産売却に関するよくある質問について回答します。
特別控除・特例を受けるための手続き方法と必要書類はどこ?
不動産売却に関わる特別控除や特例を受けるためには、不動産を売却した翌年の2月16日から3月15日(※2月16日、3月15日が土日祝日の場合は、翌平日)までに確定申告をする必要があります。確定申告の際に必要な書類は、以下の通りです。
- 確定申告書B
- 確定申告書第三表
- 確定申告書付表兼計算明細書
- 住民票の写し
- 不動産を売却した際の売買契約書の写し
- 不動産を購入した際の売買契約書の写し
- 仲介手数料や印紙税などの領収書
- 本人確認書類
- 平成21年~22年の取得を証明する書類(平成21年及び平成22年に取得した国内にある土地を譲渡した場合の1,000万円の特別控除の特例を利用する場合)
ただし、特別控除や特例の種類によっても手続き方法や必要書類は異なります。そのため、詳しくは国税庁のホームページをご確認ください。
特別控除・特例の併用ってできるの?
ほとんどの場合、特別控除・特例の併用はできませんが、なかには併用できるものもあります。例えば、3,000万円特別控除と10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例の併用です。これらの制度を併用できれば、3,000万円の特別控除を受けた後の課税譲渡所得に対して課される税率を低くできるため、結果的に大きな節税につながります。
3,000万円特別控除を受けるための適用要件とは?
3,000万円特別控除を利用するためには、次のような適用要件をクリアしている必要があります。
- 自分が住んでいる家屋を売るか、家屋とともにその敷地や借地権を売ること。なお、以前に住んでいた家屋や敷地等の場合には、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。
- 売った年の前年および前々年にこの特例またはマイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けていないこと。
- 売った年、その前年および前々年にマイホームの買換えやマイホームの交換の特例の適用を受けていないこと。
- 売った家屋や敷地等について、収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと。
- 災害によって滅失した家屋の場合は、その敷地に住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。
- 売手と買手が、親子や夫婦など特別な関係でないこと。
どれかひとつでも要件をクリアしていない場合には、控除の適用とならないためご注意ください。
3,000万円特別控除って繰り返し適用できるの?
3,000万円控除は、原則として3年に一回しか適用できない仕組みとなっています。反対に言えば、前回の適用から3年以上の月日が経過している場合は、本特例の適用となります。また、10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例は重複して適用が可能なため、前回の適用から期間が空いていない場合、こちらの特例を活用するのもひとつの手です。
特別控除を受けて不動産売却ができるかどうかは不動産会社に確認しましょう。
今回は、不動産売却がお得になる特別控除や特例について、基礎的な事項をお伝えしました。
不動産売却は、売却代金がすべて手元に残るわけではありません。税金や手数料など、売却にかかる諸々の費用を差し引きして残ったお金が、手元に残るわけです。そのため、売却前には、税金がどれぐらいかかるかをシミュレーションしておくことをおすすめします。
ただし、不動産売却に関する税制は、非常に複雑であるため、素人が完璧に理解するのは容易なことではありません。せっかくの不動産売却を成功に導くためにも、特別控除を受けてお得に不動産売却が行えるかを不動産会社に確認しましょう。